工場で知る、日本の“裁縫美”

Factory interview

  アウディーレのニットアイテムは、業界人も目を見張るほどの“仕立ての美しさ”が魅力。今回は、新潟にあるニット工場を事業リーダーである郡司とスタッフが訪問しました。『着る人を想像して、編む』工場で出会った、日本製ニットの素晴らしさとはーー。

 

工場に一歩足を踏み入れた途端、かすかな油のにおいと、
柔軟剤を彷彿とさせるあまい香りが漂う。
機械が動き続ける振動が響き渡る中、取材が始まった。

 

―――工場生産=機械ではなく、たくさんの人の手でつくられている。

 「工場生産と聞くと一般的に、機械が主に動き、人間が管理しているイメージがあるかもしれません。実際はたくさんの人の手を経て、時に職人たちの手作業も入る、非常に根気のいる仕事です。

まず、編みのオペレーターが、商品制作の依頼がくると、網目を決める作業にかかります。
編み方の認識をブランドと擦り合わせた後、デザインに合わせて網目の見え方や強度を考え、パソコンでデザインを起こします。

例えば、柄物は“柄出し”と言って、どのように編みを動かせばデザイン通りにメッシュが入るかなど、寸法通りの網目が出せるようになるまで修正を繰り返していきます。これが早ければ2〜3日、かかる時は1週間も要するほど大変労力のいる作業です。

  
柄出しを経て、ようやく布地を機械で編んでいきます。中にはひとつひとつ職人が手作業で進めていくものもあり、カッティングしたパーツ同士を縫っていくこともあります。ニットは糸の始末が必須ですから、そこは統一して細い針をつかって、手作業でお仕上げ。その後、ブランドのタグをつけます。製品に針が残っていないか機械で検針をして、さらに人の目で2回の検品を経て、お届けしています。」

 

――糸が踊るレトロな機械と、しなやかで堅い職人の手

 “糸を作る”ところから作業はスタートする。電動で動く機械は手動で動かすこともでき、郡司が体験させてもらった。
糸を巻きつける円柱型のパーツが、ワルツを踊るようにリズミカルに回る。

 

糸を取りやすいように、親指の爪だけ伸ばしています。」

他の指はニットを傷つけないように爪を短くカット。手を握らせてもらうと、しなやかでいて堅い手。熟練したニット職人の手という言葉が相応しいと感じるほど。

糸をより合わせて、実際におる製品の“糸”が完成。ほかの円柱と均等な距離を保って八の字の軌道をいったりきたりする機械は、ディレクター郡司いわく、じっと見ていると目が回りそうなほどダンスの達人だったそう。

 

――日本製ニットの良さは、ぬくもりと美しさの両立

 「かつてメイド・イン・ジャパンは、仕上がりの綺麗さが評価されていました。しかし正直に言うと、今の海外製は見劣りしないほど綺麗な仕上がりにまで、レベルが上がってきています。その中で、日本製が誇れるものといえば、“ぬくもり”なのかもしれません。

もちろん、すべての海外製が、という訳ではありませんが、一定の機械で一気に作り上げる海外品質のものは、製法こそ間違いはないものの、ニットから工業的な印象を受けることがあります。

 この工場では、他の海外製と同じメーカーの機械を使っていたとしても、細かい目の機械からちょっと粗い目の機械、中には特殊オーダーした機械までを組み合わせています。そこに、編みの技術を持つ職人たちの約30年もの間に培った経験や知識が織り込まれ、立体的かつ丁寧な仕上げで機械だけでは生み出せない“あたたかみ”が風合いとして感じられると思います。

 忘れてはいけないのは、日本の厳しい検品基準。ひとつの工場で検品まで行う。小さなことでも気になる箇所は、その場ですべて直してお届けできるのは、日本製ならではの高品質に繋がるのではないでしょうか。」

 

――「着る人を想像して、編む」職人たちが一着に込める想い

工場の職人といえば、裁縫、カッティングなどそれぞれスペシャリストに分かれて作業を担当しています。でもそれだと、目の前に置かれた作業途中のニットしか分からない。

そこで私たちの工場では、依頼してくれた会社やニットが陳列されるお店の外観、デザイナーの想いなどを職人に伝えるようにしています。一着仕上がれば、完成品を確認してまた作業に入る。そうして作業中は、着る人を想像して、編んでいくようにしています。本来なら、目の前の仕事だけで終わることもできますが、チームとして、ひとつの目標に向かって作るニットは仕上がりも、他とは違ってくると考えています。」

 

――アウディーレのお洋服は、シンプルな中にデザイン性を感じる 

 「アウディーレのデザインを見て一番はじめに感じたことは、女性らしく、シンプルだけどデザイン性も忘れていないこと。それだけではなく、着た時の見栄えも計算されている。この印象を表現できるように、私たちも考えながら製作しています。」

「この業界にいて、アナウンサーの方と一緒に仕事をする時が来るとは思っていませんでした。最初はどんな風に関わるのかな?と思っていましたが…意見交換も妥協なく、こうして工場見学にも来てくださり、とても真剣に取り組まれていて、驚いています(笑)。 今はアナウンサーの方と仕事をしているのではなくて、同じものづくりのチームとしてご一緒しています。アウディーレは、日本製にこだわった新鋭アパレルブランド、と言ってもいいのではないでしょうか。」

 

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取材・文/高橋夏果

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