仕事の流儀「自分に期待する」

日本テレビアナウンサー鈴江奈々

春は新しい環境で仕事を始める人たちが多く、期待と不安で胸が膨らむ季節。そこで、仕事の先輩として、鈴江アナに”仕事に関するアドバイス”を伺いました。失敗から学びまで余すことなく教えてくれたお話は、頑張っているあなたの背中をそっと押してくれます。


ーーどんな道のプロも、初めは素人。
自信がなくても、自覚は持って

新人時代に初めて担当したのが、早朝のニュース番組でした。
いざ生放送が始まると、ニュース読みで何度も噛んでしまう始末。視聴者の方からは、お叱りのメッセージが届き、反省会では、スタッフから猛省を促され…かなり落ち込みました。

特に、人名などの読み間違いは放送中に訂正をするため、その場ですぐ気持ちを切り替えることができず、内心焦ったまま放送が終了してしまうことも。
新人時代は失敗するたびに、出口の見えないトンネルに迷い込んでいくようでした。

そんなある日、自己紹介をする場面で
「一応、アナウンサーです」と言ってしまったことがあるんです。
そしたら社内の先輩に、「一応じゃないだろ!」とプロとしての自覚が足りていないことを厳しく叱られ、ハッとさせられました。

自信がないから”アナウンサー”という肩書きを持っている自分に違和感を持っていたけれど、アナウンサーとして働いている以上、その違和感を持って働くことは、仕事として向き合えていない証拠なんですよね。

どんな道のプロも初めは素人ですから、失敗したことを後悔するのではなく、失敗したことを成長のきっかけに変えていく。自覚を持てば、行動や思考も少しずつ前進できることを学びました。

 

ーー「人の3倍、汗をかく」
もがいていれば、解決法は見つかる

とはいえ、どうしたらできるようになるのか、いきなり上達することはなく、もがき続けていました。
当時は、反省点や失敗をノートに書いて、繰り返し意識しながら、ひたすら練習の日々。それでも、なかなか自信が持てずにいました。

転機となったのが、アナウンス部の先輩だった福澤朗さんからのアドバイス

「人の3倍汗をかけ」

これは、原稿の背景を理解するために、汗をかくほど現場に足を運んで色んな方々の声を聞く、という意味でした。

アドバイス通り、現場へ足を運ぶうち、ニュース原稿読みでミスばかりだったのも、何を伝えるためのニュースなのか、私の理解不足が大きな要因だったことに気づきました。

言葉に込める思いを受け取り、伝える。

もがいていれば、答えは見つかるものですね。取材ノートを常に持ち歩き、とにかく足を運んで汗をかくことを今も続けています。

 

ーー『自分に期待する』
チャンスがなくても焦らないで

どんな仕事でも、自信が持てなかったり、チャンスが巡って来なくて焦ったりすることがあると思います。そんな時こそ、自分自身に期待する「自分応援プロジェクト」をこっそり行ってほしいなと思います。

たとえば、提案書はクライアントの要望通りのものにプラスして、自分がいいと思ったアイデアも提出してみる、など自分が大切にしていきたいモットーを信じて、実行する。勝手に種まきをして、育つのを待つ感覚です。

必ず、何かの仕事のきっかけになったり、誰かの役にたったりしますので、気長に自分の力を信じて種をまき続け、育ててほしいです。
 

取材・文/高橋夏果

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